海外放浪の旅で見た「専門分野に特化した店」作りが原点。旧態然の布団販売業からの脱却。
働き盛りの層に「良質の眠り」を提案する専門店へ　3代目社長の挑戦

家業を継ぐまで

佐保田の家業は、先祖の佐保田範左ヱ門が明治9年（1876年）に川崎市多摩区管で、呉服店及び雑貨店として創業しました。以来、1948年に製綿所を設立、1953年にはふとん製造販売開業、1997年オーダーカーテン販売を開業と、川崎市多摩区を拠点に規模を拡大してきました。

現代3代目社長である佐保田も、初代の祖父、2代目の父の後ろ姿を見て育ったため、いずれは自分も次期社長になるべく意識して育ち、大学を卒業後は、当時急成長していた呉服販売業の企業に入社しました。入社の理由は、入社して数年で店長になる社員を多く輩出しており、今後会社を経営していく自分自身を鍛えるつもりでした。入社後は愛知県岡崎市や東京大森の支店で勤務し、約2年半で茨城県堺町の店長に就任しました。しかし店長に就任して10カ月で親会社が倒産します。いきなりの倒産を経験した佐保田でしたが、父からそろそろ家業を継いでほしいと連絡が来ていたということもあり、それまでに外の世界を見ておこうと失業保険を元手に、半年間海外放浪の旅に出ます。これがのちに半ざむの転機の発端となります。

ヨーロッパ周遊した際に感じたのは成熟した市場では「より専門化された店舗しか行き残っていない」ということでした。日本でいうと寝具専門店のイメージは、あらゆる寝具を総合的に取りそろえている形態の店舗が多い中、ヨーロッパではマットレスならマットレス専門といった形態の店舗であること、またマットレスについてはよりこだわった製品を取り扱っている点を強く感じました。当時はまだ寝具業界の事はよくわかっていませんでしたが、店舗をリニューアルする際にはこの点を強く意識した店舗設計にしました。ヨーロッパを周った後、静岡県の“モノ売り”ではなく“コト売り”を特徴にしていた寝具販売会社に1年間修行に行きました。

理由は、布団販売というと布団が山積みのディスカウント中心の販売手法が主で“モノ（物）”を中心に売るイメージがある中、その企業はお客様1人1人に向き合い、その人にとってどういう眠り・寝具が最適か“コト（体験）”を売りにしていた企業だったからです。

静岡県での修行後の2008年、佐保田は家業である株式会社半ざむに一社員として入社します。

感覚と固定観念の販売商法から理論的で科学的なアプローチ方法へ

2代目の父はすでに寝具販売の現場から退いており、専務である実母が家業を運営していました。当然、昔ながらの布団販売業を守り続けており、その真逆の売り方を経験してきた佐保田とは当然亀裂が生じました。このままでは衰退するのは明白であったため、売り場や戦略を変えるべく母と社員に伝えるも、それまで現場を仕切ってきた母と、時には怒鳴り合いとなり、辞めていく社員もいました。
それでも、自分が背中を見せるしかないと佐保田は腹をくくり、社員には1対複数、時には1対1で話し合いを繰り返し、改善をしてきました。

それまで布団業界でのマットレスの選び方は男性は堅めのマットレス、女性はやわらかめのマットレス、といった感覚や固定概念で売っていました。しかし、3代目の佐保田は、理論的で科学的なアプローチ方法に切り替えました。

一般的な寝具店舗ではBMIを基準としたマットレス選びがメインでしたが、そういった選び方ではなく、その方の骨格を測定し、その方の考えや個人の特性を踏まえ、大きく6タイプに分け、そのカテゴリーに沿った提案をする傍ら、佐保田自ら「睡眠改善インストラクター」の資格を取得しました。

ホームページをリニューアル、そこからの集客化を図る。
2014年にホームページをリニューアルしました。それまでのホームページは母と業者で作成したもので簡易的な商品紹介がメインでしたが、佐保田がリニューアルしたものは、悩みを持っている一般ユーザーが来店しやすい仕掛けを作りました。それは具体的な悩み、例えば「腰痛」といった悩みを持った方に行った提案実例をブログで紹介したり、なかなか自分に合ったマットレスに出会えない方向けに自分に合ったマットレスに出会うにはどうしたらいいかなどをアピールした内容にするなどです。そこからホームページからの集客化も可能になりました。

本社もリニューアル

2016年に本社もリニューアルしました。それまでは比較的高齢な方を対象とした店舗・品揃え・店舗内で、こだわった寝具を探している若い世代のお客様とのミスマッチに悩んでいました。リニューアルを期に半年間放浪の旅に出たときに感じた、より専門化された店舗・品揃え・店舗内装にしました。
この戦略が功を奏し、客層も30〜50代と若返り自分がイメージしていた店舗に生まれ変わることができました。彼らに共通して言えることは、この世代は働き盛りの層で、仕事を充実させるためには良質な睡眠が必要。そのためには寝具にはこだわるという客層でした。
リニューアル前までは平日にお客様が集まる傾向でしたが、今はファミリーやカップル・単身の若い世代の中心で週末にお客様が集まる店舗になりました。

今後の展開

ヨーロッパを周遊した際に感じた「専門化」という点をもっと掘り下げていきたいと考えています。
半ざむの2024年3月のリニューアルオープンを機に業界最老舗である西川が展開する「ねむりの相談所」を展開。睡眠生理学や睡眠科学の資格であるスリープマスターが睡眠分析・診断を行うサービスを開始します。独自に設計された「活動量計」を使用することで、パーソナルな眠りの測定（寝返り回数や寝姿勢、中途覚醒の回数など）や「環境チェッカー」を使用して寝室環境（光や温度・騒音）を測定・診断し、より良い睡眠のアドバイスを行います。

半ざむでは睡眠に悩みを抱えている方や健康的な生活を送りたいと考えている方に、今まで以上に喜んでいただける店舗になるべく、さらに高度な寝具コンサルティングの手法や睡眠解析の標準化に向けて人材教育に力を注いでいきたいと考えています。

また昨今、高反発マットレスの市場が活況です。様々な商品が市場にあふれる中で関東でも随一の高反発マットレスの品揃えをすることで「色々なマットレスを試してみたい」といったニーズにこたえられるような品揃えと体験ベッド数の設置を行っていきます。さらにマットレス選びに必要な理論の構築とより精度の高いマットレス選びをお客様に行えるように社員と切磋琢磨していきたいと思います。

• オーダーカーテン専門店
  カーテンギャラリーハンザム

• 楽天市場 Hanzam cocoa
• 寝具専門店半ざむオンラインストア